遠隔同化|Keep to assimilate another kohei
*遠隔同化 会場ハンドアウト
千葉真智子(豊田市美術館 学芸員)キュレーションの元、小林耕平と髙橋耕平が作品を通じて同化を試みるプロジェクト「遠隔同化」は、2016年秋から2017年夏にかけてKYOTO ART HOSTEL Kumagusukuの客室で展開された。このプロジェクトは2017年1-4月開催の「切断してみる。ー二人の耕平」(豊田市美術館)を経て、「切断のち同化」へと展開していく。
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同化のための試み
小林耕平と髙橋耕平。 二人の耕平が, 作品制作を通して同化を試みる。
同化の試みは段階的に実践され, その成果はROOM4からROOM1に向 かって順に展示されている。 同化のために, 作品の具体的なモチーフとして 任意に選ばれたのは「畏怖の造形化」。
この奇妙にも思われる設定については, 少し種明かしが必要だろう。
ことは, 同化に先立ち,「 切断」について考えたことに始まる。 共同や繋がり がますます良しとされる社会のなかで, それらは逆に私たちの日常を規定し 拘束する力としても働いている。 そこに軽やかに切断を引き起こし, 新たな接 続を望めないかと。 この漠然とした大きな問いを前に, 助走のように手始めに 取りかかったのが, ごく単純な作業として身辺にある「断片」を採集することで あった。 全体から取り残された部分。 本来の姿形や機能を喪失した, あるい はそれらから解放されたもの̶̶半屋外の回転台の上に載っているのは, そう して集められた断片である̶̶。 実際に寄り集まってきたそれらの奇形なモノ たちは, どこか人知を超えた世界に接続する別の回路を開く可能性を秘めて いるようにも思われた。 この感覚をヒントに, 今回の展示では, 人間のスケー ルを超えたものが引き起こす畏怖の念を任意のモチーフに設定することにし た。 そして同時に, 切断自体を問うなかで, 切断をもたらす可能性として, 切 断そのものではなく, 共同や繋がりの究極的な姿としての「同化」について先 に検証してみることになった。 が, これも偶然というべきか, 翻ってというべき か, 畏怖の念を引き起こすような圧倒的存在を前にしたときに, 私たちが, 「私」という個別性を失い, 等し並みにただの人間存在となり得ることを思え ば,「 同化」は切断以上に最適な設定だったと思われる。
これからの『同化し続ける二人の耕平』
ここにあるのは, 同化の試みの第一弾である。 小林耕平, 髙橋耕平の二人は, より同化を確かなものにすべく, 1年間の会期を通して定期的にイベントを行いながら, 作品を更新していく。 それは, 同化の不可能性を露呈させる結果になるかもしれないが, 1年間という長い期間は, こうした試行のためのまたとない機会でもある。
最初の更新は, 12月の初旬。 二人の耕平によるテキストも新たに発表する。
テキスト:千葉真智子(豊田市美術館)
同化の試み stepl【畏怖を造形化するなかで,同化を試みる】
小林の場合「眠りのなかに持ち込む」
既製品を複数個,敷布団に詰め込んだものと,その既製品に対応したドロ 一イングを壁面に並べたもの。
*布団の中のモノを見ることはできない。
背中にモノを感じながら,記憶したドロ 一イングのイ ージをもとに,眠りのなかで,そのモノに出会う。眠りを介したモノとイメー ジ,言葉とイメージの交換。眠りという孤島で,それらのモノだけで完結した世界に出会う。
高橋の場合「闇に浮かぶ断片」
路上などで拾い集めた断片をセレクトし,夜中の路上,公園 林などに配置して,撮影したもの。
*取り残された断片には,もとの所有者の念が残っている。
何とも言えないこの感触は人間的なスケール。畏怖はこうした人間的なスケールを越えて到来する感覚のはずである。有史以前の暗闇を想像してみる。人間的な力に闇の力を付与してみる。
同化の試み step2 【小林の指南にもとづく同化の試み高橋の場合】
指南 1-隻怖を目撃している人を撮影する。
*畏怖はモノ自体に宿るのではなく, 感覚の持ち主である人の側に由来する。
指南2 -受け身。
*モノは私に帰属するのではなく,私の外に存在する。
同化の試み step2 【高橋の指南にもとづく同化の試み小林の場合】
指南 1 -既製品とドロ 一イングの入れ替え
*記号的に過ぎるドローイングを立体に起こす。既製品を外に,イ ージを中にすることで交換をさらに押し進めてみる。
指南2 -枕
*眠りのなかでイメージの交換が行なわれるのは頭のなか。
指南3-モノの位置への注意
*畏怖を引き起こす鍵は,モノと自分との位置関係にある。
同化の試み step3 【指南を経て,耕平同士が語る】
方法の次元で試みた同化を振り返り, 耕平の制作態度の在り方に同化を探る。
installation view [Photo MASAKAZU ONISHI]