KOHEI TAKAHASHI

WORK

史と詩と私と|shi to shi to shi to

HD VIDEO(58m56s), school desk, school chair
2014

ホワイトキューブの空間に、スクールデスクがレンガ状に59台積み上げられており、横を向いた机面をスクリーンに約1時間の映像作品が投影される。観客はスクールチェアに座りそれを鑑賞する。映像は、京都府北部にある2011年に過疎化によって閉校した小学校(作者の母校)の現在の姿を数ヶ月にわたりドキュメントし、それを編集したものである。

この作品が展示された京都芸術センターは1993年に閉校した小学校の建物をリノベーションした文化施設である。映像に登場する小学校もまた閉校後様々な協議があり現在は文化施設として機能している。「史と詩と私と」は小学校跡地に別の小学校の姿を重ねるという考えから制作を始めた。先に発表した作品「HARDA-san」同様、筋書きや明確なメッセージを予め作る事無く、撮影をを重ねその場所での出来事を描写することから始めた。
 カエルの鳴き声が響く渡り廊下、グランドで遊ぶ親子、図工ワークショップの様子、校内の写真を撮る親子、太鼓の音が響く夏祭り、無人の図書室、風に揺れる木枠の窓、秋祭り、童謡を歌う老婆達、霙が滴る冬の小学校、etc。それら“現在”の姿はまるで“過去”の小学校での出来事を“再演”しているかのようである。時折映写される写真もそれを増幅させる。
 映像は机で組まれたスクリーンに投影されるため、机を意識すると映像が後退し、映像を意識すると机が後退する。同時にそれらを観る事は出来ないが、それらは互いに干渉しあい、小学校の過去の姿・出来事・記憶を互いに補完しあい、再演を支え合う。「史と詩と私と」は、歴史と個人史の記憶がノスタルジックに交わる小学校を舞台にはしいているが、決して郷愁を思い起こさせるものではない。映像に映り込んだ再演の姿、モチーフと場所の入れ子構造によって、過去と現在、歴史と個人史と交差させて、「今」「此処」の存り様について考え巡る作品である。

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